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経営理念を現場に浸透させる「制服」のチカラ

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現場との対話の回で、カッシーナ元社長・高橋克典さんが、配送部隊に「制服」を支給したストーリーを紹介しました。


高橋さんの企業の現場におけるミュニケーションの考えは、コラムでも紹介されていますが、経営者が経営方針を一生懸命考える一方、実は現場はよく理解できていない。そこで「制服」がサービス向上の効果を発揮する。というブランディングの視点の1つです。


さて、これはカッシーナでのお話。見方によれば、「カッシーナって高級家具の会社でしょ。外資系企業の外国人従業員の話でしょ。」というご意見も出るかもしれません。


そこでもう1例、もう少し身近なところでご紹介したい「制服でサービス向上を実現させた事例」があります。


制服のリニューアルが生み出した「7分間の奇跡」

JR東日本の新幹線の清掃を行う「JR東日本テクノハートTSSEI」。


TESSEIは、短い時間で新幹線の清掃を行う様子は「7分間の奇跡」として、CNN等の海外メディアに取り上げられるなど、質の高いサービスが注目されています。


そんなTESSEIの質の高いサービスを生み出す仕組みを生み出したのが、矢部輝夫さんです。


矢部さんがTESSEIの経営企画部長に就任した当時、同社は従業員の定着率も低く、事故やクレームも多い状態でした。会社に活力を感じられなかったそうです。


しかし矢部さんが現場を見て回ると、各々一生懸命掃除に取り組んでいます。「活力が無いのは、マネジメントのせいだ。」そう考えた矢部さんは、同社を単なる清掃ではなく、「トータルサービス」を提供する集団に変革させようとしました。


「掃除をする会社ではなく、旅の思い出を作る会社へ。」


スピーディーな清掃だけでなく、1列に並んでのお辞儀など、新幹線ホームでご覧になったことのある方も多いと思います。


制服で現場に理念を伝える

とはいえ当時の従業員=いわゆる「掃除のおばちゃん」たちは、このトータルサービスの考えに対し、「私たちの仕事は掃除。なんでそんなことをしなくてはならないのか。」と、受け入れなかったそうです。


話は変わりますが、ヤマト運輸元会長の都築幹彦さんも、宅急便という新規事業を始める際の3つの壁の1つとして、「社内の反対」を挙げています。新しいこと、変革を始める場面に置いては、社内の反対はつきもの。経営における理念・ビジョンの大切さは注目されていますが、それを実現させるのがいかに大変かを物語るエピソードです。


こうした状況を振り返り矢部さんは、理念を実現させるための「仕組み」が重要と言います。そこで理念を現場に浸透させるための手法の1つとして、清掃チームの「制服」をリニューアルします。


制服が従業員の意識を変える

理念を浸透させるためになぜ「制服」なのでしょうか?


それまでの制服はダボダボした「つなぎスタイル」のザ・清掃員という制服でした。そこで矢部さんは、カタログの中から清掃業ではなく、「サービス業向け」のユニフォームを選び、シャツ・パンツ・帽子のスタイルへと変えたのです。


現場に新たな制服を支給すると、乗客からの評判も良く、意識は次第に清掃→サービスへ変わったと言います。


勿論、意識改革の背景には評価制度などの数多くの工夫がありますが、制服は重要な戦略の1つだったのです。


制服効果は万国共通?

以前、グリコのポッキーのインドネシア進出がテレビの特集で取り上げられていました。


マネジメントしにくい現地の販売員を団結させるため、「Pocky」と入った赤いポロシャツの制服を支給したところ、格好良いと好評で現場のモチベーションが上がったと言います。


制服に限らず私たちは日常生活でも、下したての服を着ると気合いが入るという感覚を持っています。


これらの制服・ユニフォームがもたらす効果は、心理学の世界でも実証されているそうですが、冒頭のカッシーナのエピソードしかり、万国共通なのかもしれません。



今回は、制服による意識改革とサービス向上の事例をご紹介しました。


逆に制服が格好悪い・不評となると、従業員満足やサービスを低下させるとも言えます。日本一休みが多い会社として有名な未来工業では、社員の「ダサイ」という不満から制服を無くしてしまったという話も。


何気なく目にする制服。実は経営理念を表現する大事なツールと言えます。


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